本と映像の部屋

本、映画、漫画、テレビ等、私の感想を、あくまでも主観に基づき、書いてしまおうというページです
(2003年6月〜2004年9月分)


その11・「鉄塔 武蔵野線」のこと


 「鉄塔 武蔵野線」(銀林みのる著・新潮社刊)のことはずーっと以前この本が日本ファンタジーノベル大賞を受賞した時に少し気になっていました。
気になっていたものの結局手に取ることはなく今まで過ごしていたわけです。
この夏、深夜枠でテレビ放映された映画版「鉄塔 武蔵野線」。
録画しようと思いながら、うっかり録画しそこねました。
こういう時って何故か、必要以上にその失敗が気になるモンです!(笑)。
近くのビデオレンタル店でビデオを探してみましたが、あいにく見当たりません。(探していると見当たらない!どーでもいいのはいっぱいある!・笑)

 ビデオがダメなら原作本を読みたい!ということで図書館で借りて読みました。(調べてみるとハードカバーも文庫版もすでに絶版になってしまっているのでした)
久々に心が震えました。
この作品が鉄塔の写真満載で内容も鉄塔づくしの特異なものであるというのは出版当時にも噂で聞きかじっていたのですが、まさしく鉄塔文学と名づけられるべき(そんなものがあるのかどうか?・笑)内容でした。

 鉄塔おたくとでもいうべき小学5年生のみっちゃんこと環美晴君とその友人3年生のアキラこと磨珠枝暁君の二人の少年のひと夏の冒険。
送電鉄塔武蔵野線(鉄塔にも何々線という名前があったんだ!知らなかった!)を終点の鉄塔(80号鉄塔)から始点の鉄塔(1号鉄塔)へ一塔一塔辿っていくというみっちゃんの計画のもと、ある夏休みの一日が始まります。
読んでいて驚いたのは、本当に一塔ずつ写真が載せられていて、少年達の足取りも逐一描写されているのです。
さすがに40号鉄塔あたりまで読むと、少々読むのに飽きました(笑)。
しかし、日没が近づき少年達の「今日中には1号までには辿り着けないかもしれない…」という不安な気持ちが描かれ始めると、こちらの方まで一緒に心配になってきたりして。
みっちゃんは遂に日が暮れるとなった時、アキラを家に帰し、その晩野宿をし、翌日はゴルフ場に不法侵入したりしながらあくまでも1号鉄塔を目指すのですが、結局4号鉄塔の時点で、巡視員に保護され家へ連れ戻されます。
物語はその後、1号鉄塔のある日向丘変電所の所長の招待を受けリムジンで鉄塔を巡りながら変電所へという展開になるのですが、この部分はおそらくみっちゃんの午後の幸せな夢かな(?)(この部分で一気にファンタジー色が強くなっているんですよね)。

 私がこの本を読んで何が気に入ったかというと、少年がこの小さな旅に出るのが、何々の為といった目的でなく、ただただ鉄塔が好きだからという理由だけなんだということ。
辛い時に彼は何故こんなことをしているんだろうと思ったりもするのですが、決して鉄塔を巡るのをやめることはないのです。
単に鉄塔を巡るだけといってもいい物語がよくぞここまで読ませたなぁと少し呆れ気味になりながらも、読んでいくうちには私もみっちゃんと一緒になにやら無我の境地に至るような気がしてくるというすごさ!(笑)。

 この旅が結局4号塔までで1号塔に辿り着けなかったというのも、夏の冒険にふさわしい甘くてほろ苦い味わいで感慨深いのです。
少女ではなく少年ならではのノスタルジックな匂いのする物語が好きな人にはお薦めです。

 ああ、テレビ放映を見逃したのが今更ながら悔しい。
でも、それを観ていたら本を読まなかったかもしれないから、読む機会を作ったということでそれはそれで良かったのかもしれません。
読後、近所の鉄塔を見る目がすっかり変わった私です(笑)。

 2004年9月13日

その10・年末年始に観た映画あれこれ


 この年末年始、本も読みましたが、映画も観ました。ただし、レンタルビデオやテレビ放映のものですが…。こちらも印象に残ったものの感想を一言。

☆「エリザベス」
   こういった堅苦しそうな史劇は普段はあまり観ないのですが、お気に入りのジェフ
   リー・ラッシュも出ているということで観てみました。英国のエリザベス一世の物語。
   これが意外と大変面白かった!エリザベス役の女優さんケイト・ブランシェットの
   熱演もあってか、女王陛下にちゃんと感情移入できました。衣装、セットなど、とても
   すばらしくて映画とはこうでなくては!という気にさせてくれました。大満足!

☆「弟切草」
   この元となったゲームソフトには、随分前になりますが興味深々でした。怖い!とい
   う噂を聞いて想像のみ膨らんでいました。(実は我家にはゲームボーイアドバンス
   しかないので大したゲームは出来ません…ショボーン…)
   映画でも観て、その怖さを少しでも…なんて気で観ました。しかしこれは期待はずれ
   でした。画面がゲームを意識したせいか(色合いとか変!)やけに見辛くて、おまけ
   に怖さも中途半端な…。いっそもっとショッキングホラーにするか、それともミステリ
   ー色を強くするとか、なんとかならなかったのか…?そしてあっけない結末。物語と
   しても、もう少し練りこんで欲しかったと思うのでした。(ちょっと辛口批評です)

☆「ザ・セル」
   変な映画です(笑)。他人の深層心理に入り込んで治療するというという療法を映像
   で見せてしまうなんて。(心の風景に入り込んだ主人公の女性が歩き回ったりしてる
   んですよ・笑)。そういいながらも、シリアルキラーの意識に入った主人公が出会うイ
   メージが異様かつ斬新でなかなか面白かったですが。前半のドキドキ展開から比べ
   ると、ラスト近くはちょっとそれも見飽きてしまったかな…という気もしましたが、最後
   の最後はちゃんと見所を作っていて、観て損はしなかったと思ったのでした。

☆「模倣犯」
   TV放映分を録画して後で観ようと思った私。裏番組が終わったのでラスト近くだけど
   ちょっと観てやれと、チャンネルをかえて直ぐに例の爆発シーンがありまして、
   「!!」「…?」という気分になりました。びっくりしながら改めて冒頭からちゃんと見
   直しました。
   後でネット上でのこの映画に対する怒りの批評の数々を見ながら(非難轟々状態の
   ような…)、「ええっ?そんなに悪くはないと思うんだけど…」というのが私の感想です
   。私が原作を読んでいないせいもあるのかもしれませんが。(原作物は多くの場合
   原作を先に読んでると不満がでるのが普通です。全く別物だと割りきらないと観られ
   ないかも…。長編にその傾向が特に強いと思う私、時間的にも無理なのかも?)
   映画の流れとしては、やや分かりにくい所もありますが、まあまあ不自然さはなくち
   ゃんと筋も追えました。犯人達の造形も、利己的で他者と心を通わすことも全くなく
   自分勝手な論理で自分自身の消滅によって、何の説明責任も果たさず幕を引くそ
   の身勝手さ。ああいう犯人なら、ああいう突拍子もない形で事件を完結したいと考え
   るのも納得できるような気もするのですが…。私には中居正広演ずる犯人につかみ
   所のない妙な不気味さが感じられました。(バラエティとは違って目が怖い・笑)。
   面白かったのは、中居君の主犯は常に肉とワインを食している様子が描かれ、もう
   一人の犯人(津田寛冶演じる)も肉とワインを食しながらも、別の場面ではパイナッ
   プルの缶詰を食べていたこと、そして二人に利用される善良な青年(藤井隆)が食べ
   るのが苺とパイナップルの缶詰…。これって三人の性格設定を意識してる?
   ただ最後の最後の赤ん坊のエピソードはいらないんじゃないの?と思いましたが、
   あまりに救いのない内容になってしまったから、困っちゃってこういうのをくっつけた
   のかな…?(原作も読みたくなった私。もしや、読むと批判派に豹変するやも…笑)

☆「ターミネーター3」
   ビデオレンタルしました。おおっ!最初から最後までなんだか、やたらとにかく嬉しか
   ったのはファンだからでしょうか。
   アクションシーン(カーチェイスなど)は面白かったですね!迫力ありますねぇ!だだ
   ストーリーがほとんど追っかけというのは1作目と同じですよね。そして旧型が新型と
   戦うというシュチエーションは2作目と同じだし…。
   私は新型の女ターミネーターも強力で充分に怖かったのですが、一緒に観た夫が「
   でも…女だからな…」とフェミニストが聞いたら怒るかもという発言を!(笑)。
   ちょっと文句も言いましたが、私は充分楽しんだし、やっぱりこのシリーズ、いつ観て
   も好きです。そう、結局私はこのシリーズの大ファンなのだなぁ…ということを実感。
   これでは、おそらくもう冷静な評価は無理でしょう(笑)。

 2004年1月17日・記

その9・年末年始に読んだ本あれこれ


 2003年から2004年へとこの年末年始はなぜか、結構本を読んだような…、印象に残ったものの一言感想をば。

☆「そして粛清の扉を」 黒武洋・著  新潮社刊
   極悪な生徒(なんと、クラス全員が!!)に、担任の女教師が死の制裁を加えると
   いう極端な話です。「そんなことって、ないやろーっ!」とツッコミを入れそうになりな
   がらも、最後までちゃんと読めました(笑)。そこまでやると、到底主人公である女
   教師には感情移入できなくなってしまうのですが、うがった考えをするとそれが狙
   いなのか…?誰かが評してましたが、「バトルロワイヤル」より余程問題のある設定
   かもと!…確かに。(やっちゃえ、やっちゃえという不謹慎な気持ちと、そこまでや
   るか…という後味の悪い気持ちとを味わえるというか…)

☆「化粧坂」 森真砂子・著  角川書店刊
   私は書物をめぐり事件があれこれ起こるといった物語が好きです。この作品でも
   古典「とはずがたり」の伝承が重要な鍵になっていて、それを書き写した冊子が地
   方銀行の貸し金庫に長年にわたって密かに保管されている…というような設定だ
   けでもワクワクしてしまいました。ややメロドラマっぽいようなところもなきにしもあ
   らずですが、ラスト近くで、あっ、そうだったんだというひねりもあって、まあまあ最後
   まで楽しめたのでした。

☆「コッペリア」 加納朋子・著  講談社刊
   ビスクドールが重要なモチーフです。最初、誰の視点で読み進めるの?という感じ
   もするのですが(途中もエッ?これって誰のこと?というところもありました…いや
   、私がボーッと読んでたせいかも・笑)それを除けば隅ずみまで細やかに行き届い
   た作品というかんじがして良かったような。途中のそんなことある?という疑問諸
   々が最後に納得のいく所に収まってゆくのは気持ちがいいし、何よりも後味がい
   い話なのがいいですね! 

☆「麦の海に沈む果実」 恩田陸・著  講談社刊
   これが年末年始に読んだ中で一番気に入った作品ですね。私は時々学園物の小
   説を無性に読みたくなることがあるのですが、その時期とぴったりあったのかなぁ
   …。陸の孤島(周りが沼地だからこう言っていいのか疑問ですが)のような地にあ
   る豪奢な全寮制の学園、そこにいる生徒は裕福な家庭の子供達でありながら何
   らかの訳ありの者がほとんどで、一人の転校生の少女がその学園に入ってきたこ
   とで起こる事件の数々。私はストーリーに惹かれる前にこの学園の校長のキャラ
   クターにまず惹かれたかも(笑)。謎解きあり、学園生活描写の楽しみあり、そして
   ラストのどんでん返しと、充分に楽しめました。

☆「オルガニスト」 山之口洋・著  新潮社刊
   よーく考えると、ちょっと強引な展開部分もあるかとも思われますが、いいんです
   (笑)。この作品の持つ音楽への熱い思いに免じて、そういったこと位、私はもう気
   にしません(笑)。日本ファンタジー大賞受賞作だそうです。なんか納得、たしかに
   ファンタジーかも。狂おしいほど音楽の為のみに生きる若者の魂に魅せられる作
   品です。ラストは、納得いこうがいこまいが、こういう結末でなきゃいけないよね!
   という残酷なほど美しいものでありました。好きです、こういうの。

☆「鳥肌口碑」 平山夢明・著  宝島社刊
   平山氏のこういった短い話がいくつも入っている実話もの(?ほんとに実話か?)
   の大ファンです。とにかくどの本も読むと、うんと怖いのでホラー好きにはたまりま
   せん。語り口が絶妙で、他の人が書いたらこんなには怖くはないのではとも思いま
   す。現代では霊が…というよりもサイコな人の話の方がよほど怖いかもしれないな
   ぁと思われます。こういうことが自分の身の上に絶対に起こってもらいたくないよ
   !!というのが一番の感想ですね(笑)。 

☆「廃用身」 久坂部洋・著  幻冬舎刊
   衝撃的な作品でした。読後感はとても重い。でも、内容は読みやすく書かれていて
   、構成も凝ったものになっていて(えっ?これってフィクション?と戸惑うというか…
   )次々とページをめくり一気に最後まで読みたくなった本でした。介護問題…、これ
   からの時代避けて通れない問題の一つ。そのことを身近なこととして考えると物凄
   く落ち込むかも…。しかし、やはり怖いけれど考えなきゃいけない切実な問題です
   ね。この作品、小説としても良く出来ていると思います。

 2004年1月15日・記

その8・最近のゴジラ映画のこと


 年末になると子供向けの映画がわんさか上映されています。日ごろ映画館とはごぶさたの私ですが、こういう時期は子供のお供で映画館へ行きます。
「とっとこハム太郎」の映画がこのところ毎年(3年間)12月に上映されています。
ハム太郎命の我家の子供は、勿論見に行きます。
問題は、ハム太郎と二本立てのゴジラ映画です。
子供はゴジラ嫌いです。いや嫌いどころか大変怖がってしまっているというか…。実はこれには理由があります。

 2年前にゴジラ映画「ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃」(金子修介監督)を見たのが原因と思われます。
私自身はゴジラの一作目(うんと昔のヤツ)は見たことがありません。(これは観た人によると怖かったそうな…)私が知っているのは、あまり怖くない、もろ子供ターゲットだったゴジラ映画でした。
ですので子供とハム太郎&ゴジラ映画を観に行った私も、ちょっとビックリしました。それはそのゴジラ映画が大人の私が観ても、結構怖かったからです。
このゴジラは人間の思惑とは全く関係なしに現れては破壊を繰り返していました。そして、こういった怪獣映画のタブーを破るかのように、リアルに、まだ中に人間のいる建物を踏み潰して行進していました。(本当はそれが自然なのですが、これはあえてタブーとされた演出だったような…)
大人の私は、ヤヤッ、これは、私が知っていた甘っちょろいゴジラではなく、初代の恐るべき存在だったゴジラへ回帰したというべきもののようだ!と内心とてもエンジョイして鑑賞してました。
しかし、子供は、所詮子供。彼女、もう半べそ状態になってしまいました。
エンドロールにも、初代ゴジラの怖いテーマ音楽が延々と流れていて、…こりゃまずいと思ったんですが、案の定、家に帰ってからも、ゴジラについては一切黙して語らず、名前を耳にするのも嫌な様子でありました。

 そして去年、ゴジラは大嫌いなのにハム太郎映画がくっついている為に、やはり子供と私は観に行きました(そんなにハム太郎が好きなのか?!・笑)。
去年のゴジラは監督が手塚昌明氏に代わっていたせいか、金子監督作品に比べると怖さは無かったような。(題名は「ゴジラ×メカゴジラ」であります)
釈由美子演じる自衛官のパイロットが以前死んだゴジラの骨から作ったメカゴジラなるものを操縦して、ゴジラと戦っておりました。
設定等、ちょっとエヴァンゲリオンみたいな…(笑)。
私には釈さんのスタイルが物凄く良いことがやけに印象的でありました(ナイスバディですね!)。
幸いなことに子供は前の年ほど怖がっていなかったような…。

 そして今年も、相変わらずこの二本立てを観た私達。
今年のゴジラは去年のゴジラの続編というべき作品「ゴジラ モスラ メカゴジラ 東京SOS」(今年のタイトルも長い!!)でありました。
今回、もうほとんど怖くなかったような。
去年の作品でも感じたことですが、自衛隊宣伝映画みたいな感じがするぐらい戦闘員対ゴジラというスタンスでありました。(イラク派兵のニュースうんぬんの時期で、なにやら複雑な心境になってしまった私…) 
ストーリー的には、今回もまあなかなか面白く最後まで楽しんで観られました。

 こうして3作品もゴジラ映画を観てしまった私…、SFよりホラー好きな者としてはやはり金子ゴジラが一番印象的だったかもしれません。
ちょっと変な設定(太平洋に沈んだ英霊云々とか、護国聖獣とか…なにやら伝奇ものみたいな…)もありますが、とにかくひたすら畏怖の存在としての巨大生物ゴジラの描き方をしたのが気に入ったような(とにかく人間に対して圧倒的に強いんだもん)。
日ごろから、てんで怖いもの大嫌いの我家の子供は文句なしに、この作品が一番嫌いだと思いますが…(笑)。

 さて来年、又2本立てで上映するのでありましょうか?我家の子供はやはり観に行く?
いったいどうなるのかなぁ…、ゴジラもそんなに頻繁に現れては物語作り苦しいような…。
そう思いながらも、来年を密かに楽しみにしている特撮ものもわりと好きな私なのでありました(笑)。

 2003年12月29日・記

その7・「呪怨」「女優霊」における柳ユーレイさんのこと


 私がレンタルビデオ屋さんでビデオを借りるのは、この頃100円均一デーとか普段より安くなってる日に限られているようです(ケチですねーッ!笑)。
 さて、この間その折があり、前から観てみたいと思っていたビデオ版「呪怨」(1作目)(清水崇監督作品)を借りて観ました。映画にもなったり、少し前にちょっと話題になっていたので、一応ホラー好きの私は観ておこうかな…と思っていました。
 どこかでビデオ版が怖いんだという噂を聞いたような…。ですので最初はやはりビデオ版1作目というのが観るべき順序かと勝手に決めまして(全部観る気か!?)、とにかく観てみました(笑)。

 ……。感想…、私はとても怖かったです。 
 いやぁ…、この怖さは以前「女優霊」(中田秀夫監督作品)を観た時の怖さとよく似ている。どちらも、禍々しい雰囲気が満ちていて、こっそり一人で夜観ていた私は大いにビビリました。(我家ではホラー好きは私一人なので…)

 そして、アッと思ったのは、このどちらにも柳ユーレイさんが出ていること。
「女優霊」の方は勿論、「呪怨1」の方も主人公かな?と思われる役です。うーん、つくづく柳ユーレイさんって、こういう役にあってるなァと思いました。この不条理ともいえる怪現象に翻弄される役は(ここでは男優に限っての条件としてですが)、たくましいイメージの方ではいけません。かといって弱々しすぎてもいけません。常識があってまあまあ善良そうな平均的な市民で、しかし、やや繊細な雰囲気もなくてはいけません、見た目はあえて分類するとひょろりとしていた方がいいかな…。そしてきっと美貌でない方が普遍性があってよいでしょう(笑)。柳ユーレイさんのキャラクターはこの条件に当てはまっていて、観客が感情移入しやすいんですよね。感情移入して、柳さんと共に尋常じゃないものに翻弄されるわけです。憤りではなく何故?という疑問の中での恐怖といいましょうか…。それを体現する柳さんは貴重な男優さんであります。

 「女優霊」「呪怨1」ともあまりメジャーな作品ではないところがその怖さのもち味を強くしているように思います。そう、仰々しいと禍々しさが薄められるような気がします。
 そして一回観ただけでは(?)…どうしてそうなるの?という場面も所々あります。が、あまりに全てが理路整然と明らかになっていては怖くないかも…。全然つじつまが合わないのは論外ですが、納得行かんぞ!という不条理が避けがたい怖さを呼ぶこともあります。このへんが微妙で、ちょっと間違うと怖さより笑いの領域に踏み込んでしまうこともありますが(笑)。少なくともこの二作品は、よく分からない分、余計に怖いぞという効果が出ているように思います(微妙ですね)。
 怖いもの好きな私ですが、もう一度、レンタルして観てみるか?というと、それは勘弁してくれ…というような感じでしょうか。だって、とにかく薄気味悪いから…。どちらも後味がとても悪いし。これは、ホラー作品としては絶賛に近い評価かもしれませんが(笑)。
 しかし、もしかしたら何回か観たらあまり怖くなくなるかも…、それが出来ないが故、勝手に自分の中で怖さ伝説を作り上げているのかもしれないという気もしなくはないですが…。
 ちなみに中田秀夫監督の他の作品も(「リング」とか…)観ましたが、今のところ、私の中田作品怖さベストはやはり「女優霊」と思ってます。
 「呪怨」の方はビデオ版2とか、映画版を続けて借りてみようかな…と思ってましたが、同じように怖いと嫌だし(…と、言いながらも、一応ホラーファンとしては観てみたいような…コラッ!どっちじゃ!?)、…迷ってます。しかし、1作目が一番怖いということもよくあるし…、次の100円デーには又、借りちゃおうかな?(オイオイっ!)

 2003年12月17日・記

その6・「トリック」(1・2作目)について


 「トリック」(テレビ朝日系列)がゴールデンタイム枠で10月16日から放映されるそうです(3作目です)。私が、このドラマを見たのは、2作目からでした。1作目が面白かったという噂を耳にしていたので、本当かな?という気持ちで。。
2回程見ると、ああ、結構面白いかも…と思い、続けるうちにすっかりファンになってました(笑)。その後、1作目も再放送されているのを見ました。話が2、3話完結で、そのつど新たなゲスト陣が出てくるのが、飽き易くなった私にも受け入れ易い要因だったかもしれません。

 1、2作目を通して私のベスト作品は、2作目の中の「サイ・トレーダー」という佐野史郎さんがゲストで出てくる話でしょうか。
「トリック」はゲスト出演者の演技っぷりが大きな見所です。皆さんブッ飛び演技を見せてくれます(笑)。元々、癖の強い出演者が多いので、そういうふうになるのかもしれませんが、とにかく濃い演技続出という気もします。
 佐野さんも、やはり佐野さんらしく濃いです(笑)。劇中で、佐野さんの「ゾーン!」という雄たけび(?)は、シリーズ中でも屈指の濃さだと思いますよ。

 ドラマの内容は、笑える要素も多い途中部分と、推理ものとしても結構しっかりしたプロット、そしてシビアで重めのラストが魅力的です。ラストはいつも、大層ビターです(悲劇的といっていいかも)!このアンバランスが魅力の一因かもしれません。

 他のゲスト陣の中にも、私の注目の方が何人かおりました。
1作目中の「なんでも必ず消す男」の篠井英介さん。
私が、篠井さんを初めて意識したのは、映画版「NIGHT HEAD」をテレビで見たときでした。しゃべらない危険な超能力者を演じてました。主役の豊川悦治と武田真治も確か超能力者という設定で、内容はとにかく暗かったですねー!でも、暗いぞー!暗すぎるぞー!とツッコミ入れながらしっかり最後まで見ました。ええ、私は嫌いじゃないですこういうのも(笑)。篠井さんの存在感が大きくて、誰だ?この人?と思ってました。その後、テレビでも時々見かけるようになりました。ネットで調べてみて、ああ、知る人ぞ知るという人(カリスマ的な)だったんだと知りました。

 そして同じような意味で、1作目中の「千里眼の男」の橋本さとしさんも。
劇団☆新感線の看板役者だった方で名前だけは知ってましたが、田舎住まいなもんで、この劇団の芝居を見たことがありませんでした。姿を見れて、おおっ、この人が…!と喜んでしまいました。

 濃い演技について書くと、もう一人、佐伯日菜子さんの怪演を忘れてはいけないかも。
1作目の中の「遠隔殺人の女」の佐伯さん、凄かったです。
古くはアンソニー・パーキンスが映画「サイコ」で、あまりにはまりすぎた演技をしたため、その後ニューロティックな役柄しか仕事が来なくなったというように、あまりの迫真の演技(サイコさんぽい)だと困ったことも起こりますよね(笑)。
佐伯さん、そんなに鬼気迫るほど演じて大丈夫か?映画「エコエコアザラク」でも熱演ぶりを耳にしましたし…。もうカワイコちゃんヒロインとかは演ずるつもりは一切ないのか?ふっきれてるぞ!という感じです(笑)。

 ゲストのことで盛り上がり続けた私ですが、レギュラー陣も勿論いい味出してます。
仲間由紀恵さんも芸の幅が広まった感じですし、阿部寛さんは当たり役を得たという所でしょうか。
ずーっと昔、モデル上がりの阿部さんに対して、なーんだモデル上がりか…などと軽んじて見ていたことがありました。(すみません!)それがNHKの大河ドラマ「八代将軍吉宗」で柳沢吉保(?…だったかな?)を演じているのを見て、考えを改めた私。ややっ!本気で役者としてやってくつもりだね!という熱意みたいなものがひしひしと伝わってきたからです。
あれからもう何年たつでしょう。阿部さん、もう立派な役者さんになりましたね(私に言われてもうれしくないか・笑)。「トリック」でも、とてもいい味出してますもん。

 初めて見る人は、最初違和感あるかもしれませんが…、ちょっと我慢して見続けるとハマる人は必ずハマると思います(笑)。そういう種類のドラマです。
ああ、放映が楽しみです。そして、この機に、映画版もテレビ放映してもらえればビデオを借りなくても済むのにと、セコイことを考えている私です(レンタル屋さんで借りようとすると、何故か誰かが借りていて、今でも見てません…笑)。

 2003年11月7日・記

その5・映画「es」のこと


 「es」という映画をビデオでレンタルして見ました。
前に雑誌で、この映画がスタンフォード大学で実際に行われた「監獄実験」をモデルにした映画だというのを読んだことがありました。
この実験は、始めてすぐに、予想をはるかに超える状況に陥り、被験者の精神に多大な影響を及ぼした為、途中中止を余儀なくされました。、被験者と大学の間で賠償問題の訴訟も未だに引きずっているとか…、いわくつきの実験です。

 ずっと前にテレビで「沙粧妙子 最後の事件」(浅野温子主演)という番組がありました。
その中にも、確かこの実験のことが引用されていたような…、心理学の分野では、大変
衝撃的な事件だったらしいということで、その時からずっと気になっていました。
ちなみに、この「沙粧…」は結構ツッコミ所の多い作品です。
浅野温子の凄い演技(どうした…、大丈夫か?という感じ・笑)と共に、やけに暗くて思わせぶりな演出、サイコものを狙った雰囲気作り、突然バーンと鳴り響くメインテーマ、変なもの好きな私には、大層ウケてました。

 映画「es」の中での実験は、一般から被験者を新聞広告で募り、被験者のうち半分を囚人役に、半分を看守役に割り当て、2週間にわたって実際の監獄さながらに生活させるというものでした(実際もほぼこの通りだったようです、ただ被験者は学生だったらしいです)。
普通の人々が与えられた役割により人格がどう変貌していくのか…というのが実験の趣旨です。
主題が重い分見ごたえのある映画です。次に何が起こるのか…、見ていてずっとドキドキしました。
看守役は、日に日に冷酷に支配的に、囚人側は、卑屈に、無気力に、想像をはるかに超える速さの展開。
何より普通の人々の変貌振りにゾッとさせられました。それが特別な資質の人物ではないのに、そこまでするか!というような行動に走ってゆきます。
映画はフィクションですから、殺人に至るまで、彼らのエスカレートぶりは止まりませんでしたが、実際の実験は6日間で中止になりました(しかし、それでも、もっと早く止めるべきで、実験自体、その後は試みることすら禁止になったようです)。

 人が、立場により、その人格が変わるように見えることは、考えてみれば私達の周りにもあるような気がします。
例えば母親は母親として発言しようとします。会社の課長であれば、部下に対して課長らしくと振舞います。それはそれで自然なことです。
 しかし、絶対的な権力を持たせて、外界と遮断して、そのシステム内のみの世界で人を置いた場合、相手に対して、徹底的に服従させることを良心の呵責なしに行えるほどに変貌するというのは、物凄く怖いことです。例えば戦時中とかは、いやおうなく、そののなかで身動きできない状況ですよね…。
 私が恐れを抱くのは、そんなことが絶対あるはずはないと言い切れない自分の心に気づいているからかもしれません。
人の本質、アイデンティティは何を拠り所にしているのか、単にシステムのうちの自分に与えられた立場に拠っているのではないか!…、特に、これといった宗教感も持たない私などは、今ある道徳観のみでは、そういった状況下では自分を支えきれないかもしれないんじゃないかと、言い知れぬ不安を覚えました。
勿論、そうゆう状況にあっても、揺るがない人間も描かれていて、ほっと安心する面もあるのですが、やはり大変重く、やや後味の悪い作品かもしれません。
でも、飽きさせない演出ですし、堅苦しくはなく、ドキドキさすコツを知っているというか…、その点、観て十分満足させてくれる作品でしたが。

 この作品と一緒にレンタルしたビデオ、ホラー作品「メビウス」…、これはいったいどうしたんだ!と、私に言わせた作品でした。
ものすごーくつまらなかったです。私は、自慢じゃないですが、つまらないと一般に言われている作品でも、意外とウケてしまうという、採点の甘い人です(笑)。
その私を、これほど退屈させるとは!ウルトラつまらないといっていいでしょう。
 この名も知らぬ作品を借りたのは出演者の中に、クリストファー・ウォーケンが出ていたからです。クリストファー・ウォーケン好きの私は彼の名前に惹かれて借りてしまいました。そういえば、彼は前から、あまり作品に恵まれていない俳優さんかもしれませんね…。作品はどうしようもなかったですが、彼を見たことでまあ、ちょっとだけ許すか(?)というところでしょうか(笑)。

 2003年9月16日・記

その4・ジェフリー・ラッシュ、映画「シャイン」、「TATARI」のこと


 ジェフリー・ラッシュ、今、公開されている「パイレーツ・オブ・カリビアン」で呪われた海賊
バルボッサ役の俳優です。
私は、まだ見ていないのでこの映画での彼がどうというのは分からないのですが…。

 ジェフリー・ラッシュを初めて見たのは、ビデオ店で借りたホラー作品「TATARI」でありました。
この作品、B級ホラー作品の王道を行くというか…、とにかく雰囲気の怪しい作品です(笑)。
ラッシュ演ずる男は恐怖を売り物にする遊園地のオーナーで、大金持ちです。
気の強い高飛車な妻の誕生パーティを、丘の上の幽霊屋敷を借り切って行おうという、悪趣味な人物。
この幽霊屋敷、元は精神病院で、患者に対して生体実験等、非人道的な所業の限りを尽くし、あげくは患者の暴動で廃院になったといういわくつきの建物。
このゴーストだらけの建物に、ラッシュをはじめ、招待客等が閉じ込められ、恐怖の一夜を過ごすという粗筋です。
もちろんB級ホラーゆえ、登場人物らは、悪霊たちによって次々に惨殺されてゆきます。

 ラッシュの役とて、どうってことのない印象の役柄なのですが、何故か、見終わった後、この人って誰だ?と私の興味を惹きました。
何故でしょう…?たまにこういうことがあります。
なにか、よくわからないけれど、気になる俳優がいるんですよね。
…ということで、ラッシュのほかの作品を探してみました。

 そして、主役をやっている「シャイン」を見つけました。
こちらは「TATARI」とは大違いの名作です。(でも、私は「TATARI」のチープさも大好きですが!)
「シャイン」は実在のピアニスト、デビッド・ヘルフゴッドの半生を描いた作品です。
幼い頃より、父の英才教育でピアノの練習に明け暮れるデビッド。
ゆえに映画は最初から最後までピアノの演奏がふんだんに、ちりばめられています。
この演奏に、まず感動!(ああ、ピアノって素晴らしい!)
ヘルフゴッドの演奏するラフマニノフの曲が入ったCDが無性に欲しくなりました。
そして、天才的な技術を持ちながら、父のプレッシャーに押しつぶされたあげく、精神病院に入ったりと不遇の日々を過ごす主人公を演じたラッシュの確かな演技に引き込まれました。
それに、青年時代の役者さんもよく演じてて良かった。
目が離せない緊迫した演出もいいし、一気に最後まで見せられてしまう作品でありました。

 なんと、ラッシュはこの演技で、アカデミー主演男優賞を取ったらしいです。
やはり、名演だったんだ!
それにしては、日本ではあまり認知度が高くないような気もします。
どちらかというと、名脇役ぽい人だからかも…、それにおじさんですしね。

 是非、皆に見てもらいたい名作「シャイン」、そして一部のホラーファン(変な映画好き)に、是非見てもらいたい「TATARI」(笑)(いや…凡作かもこちらは…、でも私は好きですが!)。
お勧めです。
他の映画の彼も見てみたいなあ…(「レ・ミゼラブル」とか出てるらしい)、そして、今公開中の「パイレーツ・オブ・カリビアン」も勿論見たいなあと思う私でありました。

 2003年8月14日・記

その3・ 平成仮面ライダーシリーズ…テレビ朝日系放送


 日曜日、朝っぱらから、仮面ライダーを見ています。
平成仮面ライダーシリーズ(今はもう4作目)です。
子供のお供で見始めて、結構面白いじゃないと、ずっと見続けています。
ストーリー展開も、以前、私が若かりし頃のとは違い、ワンパターンじゃなくなってます。

 イケメン(なんじゃ…この言葉は)俳優がたくさん出ているということで若いお母さんが夢中になっているというニュースも報道されたりして(私はおばさんですが…笑)。
私も、以前の暑苦しい感じの(濃いというか…)主人公達に比べると、なんとさわやか系かと、時代の流れを感じておりました。
しかし、見ていて思うのは、ストーリーが子供に、どれだけ理解できてるのかなあ…ということ。
幼児には分からないと思いますよ。
しかし、小学生とかはどうなんだろう…?
意外と、複雑なストーリーも理解できるのかもしれないし…。
大人が、勝手にこれは分からないだろうと決め付けるのもエゴかもしれないしね。

 作り手の方はきっと、幼い頃に前のシリーズを見た世代かな…。
自分達の前のシリーズに対するオマージュ的な感情をもって作っているんじゃないかという気がします。
私自身が懐かしさと、それプラス新しさとを発見するたびに喜びを覚えるように、作り手側も作品で楽しんでいる感じがするのです。

 ふりかえると、私達が幼かった頃、がちがちの勧善懲悪的なテレビ番組が結構ありました。
そして、これは、ちょっと怖すぎるというような子供向け番組も。
例えば怖いほうの具体例としては、何度もテレビアニメ化されている「げげげの鬼太郎」。
初期の方は、実に怖かった。
だるまの妖怪が、人間を食べつくしたり、禁忌の場所を犯した者が報いとして、鼻、耳が溶け、目が陥没して、最期は血の足跡だけを残してこの世からいなくなったり…、ぞっとする展開でした。
鬼太郎さんも、妖怪を懲らしめるだけでなく、殺してましたよね…。
しかし、最近の方になると、懲らしめるだけで、謝れば許してますし、妖怪自体の行動もそんなに凶悪じゃないしね。
このちょっと怖すぎる番組たちからは、だめだよね、絶対しちゃいけないことがあるんだ!という畏怖の気持ちを学んだような気がします。
そして、がちがちの勧善懲悪の方からは、悪いことをするとこうゆうことが待ってるという因果応報の教えみたいなものを叩き込まれたような。
やや、大きくなると、それらが、あまりにも紋切り型なのに、疑問を抱き、善悪がそのように割り切ることのできないものであることに気づき始めました。
善は悪にもなりうるし、悪はある面から見ると善の一面もあるというような、複雑な実態。
それを考えると、割り切れない事へのジレンマで人は苦悩します。
でも、この変だなあ…、という自らの中から起こった疑問は、あまりにも勧善懲悪的なものあってこその疑問だったのかも。
最初から、そういった複雑な世界感を持った媒体のみを見ていたら、どうなんだろうという危惧もあります。

 平成仮面ライダーシリーズも多分に複雑な世界感を目指しているように思えます。
大人が見ても楽しめるということを意識しているからかもしれません。
玩具メーカーをスポンサーにしているし、その購買層は幼児が多いであろうから、ターゲット的には、やはり小さい男の子なんでしょうが…。
中途半端な感じもします。
前の時間帯のレンジャーものの方が、コンセプトとしては分かりやすいかも。
しかし、そう言いながらも、観て大いに楽しんでいるので偉そうなことはいえませんが…。

 特に、今やってる「仮面ライダー555(ファイズ)」の主人公のお兄さん(お若い!)が私好みの美形で気に入っております。
脇のお兄さんたちも、さわやか美形が多いような(目の保養になります)。
はは…、すごくミーハーです(笑)。

 2003年7月8日・記

その2・ 動物のお医者さん…佐々木倫子・著、及びテレビ朝日系同作品放送について


 テレビ朝日系列で「動物のお医者さん」がドラマ化され、放映されていた。
原作、佐々木倫子さんの漫画は大好きな作品だった。

 私がまだ働いていた頃(10年位前か…)、同僚のNさんに単行本を貸してもらって読んだのだった。
彼女からは他にも、「幽々白書」や「帯をぎゅっとね」といった漫画作品も貸してもらった。
あの頃、私は結婚して間もなかった。
借りたのを家で読んでいると、いつの間にやら、夫が一緒になって読んでいるではないか。
いや…こういった漫画は、それまで、読んだことがないであろうという感じの人だったもので、ちょっと驚いた。
「釣りバカ日誌」は読んだことがあると言ってたけども…。
そんな人をも、惹き付けたか、これら3作品!
だてに人気があるわけじゃないんだ、結構よく出来てるものね。
久しぶりに漫画を読む機会に恵まれた私(しばらく全く読まない時期があったもので…)は、改めて感心したものである。

 そんなお気に入りの「動物のお医者さん」のテレビ化である。
気になる、気になる。
もちろん見た。
うん!これはいい!と手放しでは言わない(笑)が、まあまあ、許せたよ、とは言えるだろうか。
好きな作品の場合、どうしても原作とのイメージギャップが強く出てしまうので、点が辛くなるものである…。
私の中で以外だったのは、絶対、失望するだろうと最初思っていた漆原教授(こんな破天荒な奴を演じられるのか!)を演じた江守徹氏が、登場人物中、一番それらしくかんじられたということだろうか!
以外や以外、実在の人物ならきっとこんなだ…と思わせてくれた。
ドキドキ、ハラハラ、胸にどーんと衝撃を受けるようなドラマもいいが、こんなサラリとしたドラマも、たまにはいい。
ちょっと、癒し系?

 しかし、なんといっても、一番気に入ったのが、番組の終わりで、「朝日のなかで微笑んで」のカバー曲が聴けたこと。
久しぶりに耳にした、ユーミンの名曲。
聴きなおして、今更ながらに、その旋律の美しさと、詞のセンスの良さに驚かされた。
全然、古びてない。
懐かしいくせに、新鮮だった。
曲と共に流れる海岸を走る主人公と犬(もちろんチョビ)の映像も、美しく、叙情的で、好みだった。
この部分で随分、私の点数、稼いだかも。

 2003年6月・記

その1・ 緋色の記憶…トマス・クック・著、文春文庫


読み始めてから読み終えるまで、なんと2年ほどかかった。
4分の1ほど読んだ時点で挫折していた。
だって、なかなか、どんな事件が起こったのか、分からないんだもの。
トマス・クックは何作も読んで御贔屓の作家だったし、この作品は出版当、書評でベタ褒めの作品だったので
、いそいそと読み始めたのに…。
ミステリーだから、事件があるはずなのに、勿体つけてて、どんな事件か一向に分からない。
じれったくなって中断していた。
2年ほどたって、ふと、残りを読んでみるかという気になって読んでみた。
半分まできても、事件はよく分からないまま。
それでも今度は我慢して(笑)読み続けた。
3分の2ほど過ぎた頃から、結構引き込まれてる自分に気が付いた。
そして、最後まで読んだ後、なんと私は大そう感動していたのだった!!
あくまでもミステリーという枠で読もうとしていたため、最初の内はつまらなく感じていたのかも知れない…。
いや、それとも最近ややせっかちな性格になった私のせいかも…。
チャタム校事件というのが原題。
学校を舞台にしている。
校長の息子が、転任してきた美しい美術教師と出会ったことが、全ての始まりというところか。
この女性教師と、妻帯者の同僚教師の間のロマンスが悲劇を引き起こす。
日本版タイトルの緋色というのは、不倫の意味で使われてるんでしょうね、きっと。

少し前にNHKでこの作品がドラマ化されていた。
大丈夫かと不安交じりに観てみると、なかなか良く雰囲気が出ていたように思った。
私的には合格点をあげてもいいかな。
映像と音楽が美しかった。
しかし、ラスト近くの展開に原作とは違う部分が結構あり、この部分はちょっといただけない気もした。
原作はあのラストゆえに感動したのだから!
トマス・クックの他の作品にも共通するが、物語の底辺に流れる叙情性が私は好きだ。
それと同時に大変重い主題が提示されていたりするところも。
この二つの融合具合が魅力かも。
NHK版は展開を変えた分、その点が甘くなってしまったように私は感じたのだが…。
                                                       2003年6月・記

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